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神戸からの手紙

「〈妖しい街神戸〉」-タルホと三鬼

神戸の街を舞台とした文学作品はそれこそ山ほどあります。戦争の悲惨さを訴える「火垂るの墓」は野坂昭如、ブラジル移民への哀歌「蒼氓」は石川達三、年上の人への純粋な愛を語る「天の夕顔」は中河与一、 陶展文の推理が冴える「枯草の根」は陳舜臣。最近では映画のロケも記憶に新しい「風の歌を聴け」は村上春樹、北野のレストラン「アヴィニョン」を中心にドラマが展開する「花の降る午後」は宮本輝等々あげればいくらでも出てきます。そこで今回はあまり多くの人には読まれていないようですが、神戸の特徴を妖しいまでに活写した作品をご紹介しましょう。
大正12年に発表された稲垣足穂の「星を売る店」、そして俳句の鬼才西東三鬼の「神戸・続神戸」。いずれも神戸の街の元来の”エキゾチシズム”を表現していると言っていいでしょう。
「星を売る店」の舞台はガス燈に照らしだされた大正末期の北野坂、山本通り界隈。幻想というべールで街の臭みを消し尽くしてしまう不思議な筆の運びです。読み進むうちに自分が魔法をかけらているような気分になります。描かれる人物も中国人やアラビア人、インド人と様々。そこに登場する”星”は道端のお店で輝く〈こんぺい糖〉。それは世界でもっとも天に近いエチオピア高原のどこかにある奇蹟の地で採れたほんものの”星”で、東洋更紗を扱う店の主人はこの星の蒐集家。輝きは宝石のよう、お店の店員が石炭の代わりにくべるとおもちゃの機関車が汽笛を鳴らしてガタゴト動きだす。そんな不思議な世界です。

トアロード

一方「神戸・続神戸」はトアロードのNHKの少し下、東側にあった不思議な人たちが集まる「ホテル」の昭和17年頃を描いています。同じホテル(アパートと表現したほうが分かりやすい)にたまたま長期滞在している人たちの泣き笑いの人生の〈日常〉を描いていきます。白系ロシア、タタール、エジプト、台湾、朝鮮。そして日本人はバーのマダムとどこかの病院長。そこには港町神戸のもつ「国際的」な混沌とした現実が溢れていて、ほんとうの妖しさを醸し出しています。いや〈怪しい〉という言葉の方が似合うかもしれません。
どちらの小説に描かれた神戸も今の神戸とは読む人に少し違和感を与えるでしょう。イメージで言えば、誰もが魔都「上海」を意識してしまいそうな描写が続きます。大正から昭和初期にかけて日本は今よりももっと国際的だったのでしょうか。
そんなことを考えながら神戸文学散歩をしてみると、きっと自分の神戸を発見できそうです。

〈参考文献〉 「タルホ神戸年代記」 稲垣足穂(「星を売る店」所収)第三文明社
「冬の桃」 西東三鬼(「神戸・続神戸」所収)毎日新聞


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