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お菓子の開発物語

アンド

アンド

紅茶やコーヒーを使った菓子は、けっして珍しくはない。しかし、素材が持つ香りをここまで生かした商品があっただろうか。本高砂屋が新発売した「アンド」は、紅茶の葉と、挽き立てコーヒーを焼き込んだクッキー。サクッと噛めば、豊かな風味と香りが口の中で舞い、品のよい後味を残す。日本を代表する洋菓子職人、高杉良和が想いをこめて作り上げた商品である。

はじめて「アンド」を口にすると、香りの高さにまず驚かされる。ホロ苦いコクと穏やかな甘味が快いハーモニーを奏で、舌に爽やかな芳香が残る。まさに素材の持ち味を最大限に引き出したクッキーだ。しかし、実際は紅茶もコーヒーも菓子に焼き込むと大幅に風味が損なわれる素材である。それを、紅茶、コーヒーのフレ―バーで香りづけするのではなく、素材だけの力で勝負したいと、難問に挑戦したのが、高杉良和という男だった。

社長・杉田肇から新商品の開発を託された高杉は、本高砂屋が展開する神戸・御影のケーキショップ「高杉」のシェフである。正統派フランス菓子の技法に、洗練されたセンスと季節感を盛り込んだ斬新なケーキづくりで、プロの間でも注目を集める男。数々の受賞歴を誇り、神戸有力菓子メーカーの統一ブランド「神戸夢探訪」’97コンテストでは最優秀賞を受賞。そんな高杉をもってしても「日持ちがして全国配送でき、自家用にも進物用にも使えるものを」と、杉田が出すいくつもの条件すべてを満たす菓子を発想するのは容易ではなかった。スパイス、ナッツ、ヌガー、あらゆる素材で高杉は焼き菓子やクッキーを試作し、杉田は試食を続けた。

そんな中から、紅茶とコーヒーが浮かび上がった。素材自体に酸化防止作用のある成分などが含まれ、日持ちの必要な菓子に適している。しかし、問題は風味である。本来の持ち味が引き出せないのでは意味がない…。おざなりを排し”本物”を追求することは本高砂屋の基本姿勢だが、それは同時に高杉自身のこだわりでもあった。

フランスの一部でしか出回っていない紅茶葉のフリーズドライという技法に、高杉は着目した。真空凍結乾燥によって本来の風味がほぼ完璧に保たれた葉を砕いて生地に混ぜ合わせることで、難問を解こうとしたのだ。この時、細かく砕き過ぎると生地が固くなり、また荒いと食感が悪くなる。ギリギリの大きさを割り出し、混ぜる量をコンマ何gの単位まで極め込んでいくための作業が続けられた。こうして、香り高いアールグレイそのままのクッキーが誕生しようとしていた。一方、コーヒーは、渋味、苦味、酸味のバランスを考えて3種の豆をブレンド。生地に混ぜて焼いた時に、カリッとした食感が際立ち、最も香りが立つように計算し、深炒りのフレンチローストを採用。こちらも試作品の完成にこぎつけていた。

続いて、高杉のレシピをもとに、生産性を上げる試みが始まった。全国販売するには効率を良くしなければならない。ところが結果として、機械まかせにできたのは、生地を一定の大きさに絞る工程のみ。いくつもの素材を、段階を経て混ぜていく生地づくりなどは、合わせる時の温度をいくら数値化してもなお微妙なタイミングの判断が必要。結局、大きな部分を手作業で行うことになった。 しかし、この非効率的な部分こそが「アンド」の生命かもしれない。人の技と想いが存分に吹き込まれて、他にはない味となっているはずだから…。

紅茶とコーヒー、2つの味を意味するネーミング。それに合わせた2枚1組の洒落た包装で、まずは、手みやげ用として登場する。新しい味、商品との出逢いは、人との出逢いに似て心をときめかせるものがある。「アンド」もまた、これから多くの人に出逢い、舌と心を楽しませることだろう。


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