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お菓子の開発物語

露氷(つゆごおり)

露氷(つゆごおり)

草の葉に宿る露。朝の光にきらめく一粒の雫を思わせるような商品が、1995年夏に本高砂屋からデビューした。その名も「露氷」。林檎、甘夏、葡萄、柘榴。選び抜いた素材の香りや甘味を最大限に生かしつつ、生で食べるよりもさらに、豊かな味わいに加工したシャーベット。口に入れると、キメ細かな粉雪のように溶けてもぎたての果実のすがすがしさが残る。洗練された和風デザートとして発売早々に人気を得たこの氷菓には商品づくりに携わる者たちの徹底したこだわりが息づいている。

夏のギフトにもなり得る和風デザートを……。社長杉田肇の言葉を受けて、藤沼寿一を中心とする商品研究開発部のスタッフが動きはじめた。夏の洋風デザートとしては、パスパーラがすでにある。「ホテルのデザートにもなるゼリーを」というコンセプトで商品化されたパスパーラ。高い品質を擁するこの冷菓に匹敵する、和風の冷菓を開発すること。これが藤沼らに託された課題だった。パスパーラと同じく「今までにない新しい果物を、それも100%天然に近い素材を採用すること」という条件つきである。こうして、開発チームの試行錯誤が始まった。94年、格別に暑い夏のことである。

真っ先に藤沼の頭に浮かんだのは、かつて本高砂屋が商品化したことのある小豆や抹茶などの和風シャーベットだった。この製法技術を土台に、全く新しい商品を創りだすこと。そのためには、ありきたりの素材では満足できなかった。藤沼はこだわり抜いた。清々しい味わいやじんわりと伝わる苦み、すっぱさ。日本の果物特有の風味を求めると同時に、加工した時に、生で食べる以上のおいしさが引き出されていなけれぱ商品としての価値がない。候補にあげた果物は、アンズ、ウメ、リンゴなど10種類を超えた。

味作りを担当したのは中橋正継。やはり、こだわる男である。中橋がまず行ったのは、候補にあがったすべての果物でシャーベットを作り、開発に携わる社員たちに試食させ、人気の高いものから素材を決め込んでいくことだった。といっても、リンゴひとつをとっても、品種によって、産地によって、その年の出来具合によってさえ味が違う。これを、どこの産地、どんな品種をどうブレンドするか。糖度はどこまで上げるか、酸味は抑えるのか。納得のいく試作品が一通りできるまで、連日の研究開発は、まさに産みの苦しみの連続ともいえるものだった。

製法の面でも、中橋は土台となった技術に独自のものを加えている。シャーベットの生命はキメの細かさだが、同時に家庭の冷凍庫で凍らせるタイプは、冷凍庫から出した時にちょうどスプーンが入る固さであることも重要だ。これらを決定するのは、素材をピューレにした時の濃度と、糖度のバランス。そこで、家庭の冷凍庫の温度を想定して、何通りもの配合を試みながら微妙なバランスを割り出していった。粉雪のような軽やかさは、この微妙な配合から生まれたものである。

そして、試作したシャーベットのなかで人気の高かった素材をもとに、さらに何度か味直しが行われた。生で食べるよりも洗練された味わいにするために、砂糖や洋酒、香料といった隠し味をそれと感じさせない程度にブレンドする。これもまたひとつの技術といえる。

こうして、アンズ、リンゴ、アマナツ、ブドウの4種類、それも産地まで絞り込んだ素材が、いよいよ商品化されることになった。あとはパッケージのデザインを待つぱかり。ところがこの後、思わぬ展開が待っていた。

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露氷(つゆごおり)

和風でありながら、どこかエキゾチチシズムを感じさせるパッケージデザインが印象的な「露氷」。箱の蓋を開けると、シンプルな意匠のカップが並んでいる。そのカップの中身は、もぎたての風味にこだわり抜いて仕上げた、宝石のように美しい果実のシャーベットである。舌はもちろん、目まで楽しませてくれるこの氷菓は、昨年の発売早々から夏のギフトとして人気を呼び、本高砂屋のヒット商品のひとつになろうとしている。

全く新しい感覚の和風デザートが、本高砂屋から生まれようとしていた。「これまでにない日本の果実、それも100%天然に近い素材を採用し、日本の果実特有の風味を最大限に生かすこと」。こんなコンセプトを掲げ、商品研究開発部が試作を重ねてきた和風シャーベットである。アンズ、アマナツ、リンゴ、ブドウの4種に素材を絞り込み、産地まで限定するこだわり方で仕上げた味に、技術者たちは十分な自信を持っている。この試作品をもとに生産方法や販売方法を決定し、価格設定にかかるなど、商品化はすでに最終段階に入っていた。

この時、同時進行でパッケージデザインが進められた。デザインの依頼を受けたのは、洋画家として、また書家、陶芸家として活躍する綿貫宏介。多彩な分野を融通無碍に横断し、独自の世界を拓く人物である。本高砂屋は、この著名な作家を顧間に擁し、これまでにも数々のデザインを任せて、ヒット商品を生み出してきた。

今回のパッケージは、写真ではなくシンプルなイラストで商品の存在感を打ち出す考えだった。「この素材ではダメだ」。打ち合わせの席で、綿貫の強い声が飛んだ。アンズとアマナツの色や形が似ているため、イラストにすると平板になると言うのだ。「デザインから言えぱ、ザクロが映えるが…」。綿貫のこの一言を、同席していた社長杉田肇は聞き逃さなかった。商品イメージを決定するパッケージの完成度にまでこだわるのが、本高砂屋のモノづくりの基本姿勢である。しかもザクロは、まだどこのメーカーも商品化していない果実だ。コンセプトにもぴたりと合う。杉田は、その場でアンズからザクロへの変更を決定。急きょ、商品研究開発部にもその旨が伝えられた。

しかし、ザクロという果実を、使ったことがないだけに技術者たちはさすがに困惑した。鮮やかな赤い色のグレナデンシロップがザクロの香りのシロップであることはわかっている。また、ザクロがペルシア地方原産で、アメリカやヨーロッパでは比較的ポピュラーな果実であることも。しかし、中東からインド、中国とシルクロードを経て日本へやってきたこの果実、はたして国内に加工に適した品種や産地があるかどうか…。日本の産地を探す一方で、輸入した素材を試しながら、何度も味出しが繰り返された。

リンゴ、ブドウ、アマナツ。ここに、日本ではじめてシャーベットとして商品化されたザクロが加わったことで「露氷」はよりオリジナリティーあふれるものになった。素材の変更はいわばひらめきによるものだったが、それを”瓢箪から駒”の結果に導いたのは、確かな技術の裏付けと不断の努力があればこそ。常に新しいものに挑戦するエネルギーが、ひらめきを本物の”創造”に結びつけたといえる。

また、箔押の技法を使ったパッケージは、豪華な和風モダン感覚のものに仕上がった。シャーベット自体の味の良さやオリジナリティーはもちろんだが、パッケージの持つ品格でも群を抜き、贈る人のセンスが香るギフト好適品として着実に育っていこうとしている。


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